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【報告@】 食育で「カ・ゾ・ク」を「家族」に結び直す 〜「弁当の日」の実践から〜
香川県・綾川町立綾上中学校 竹下和男さん
「心の空腹感」を抱える現代の子どもたち。家族のあり方をみつめ、子どもたちの育つ環境を整えたいという願いから始まったのが「弁当の日」の取組みです。2001年、竹下さんが校長を務めていた香川県滝宮小学校ではじまり、現在、全国550校あまりの小中学校で行われています。
「弁当の日」のルールは@すべて自分でつくる、A5・6年生だけ行なう、B「弁当の日」は10月から2月まで、毎月1回ずつ行なう、の3つでした。
初めての「弁当の日」。「自分がつくった」弁当を自慢する子どもたち。しかし、「ぜんぶ」という言葉は聞かれません。お母さんが焼いた卵焼きを切ったのは自分、お母さんが炊いたご飯に梅干しを添えたのが自分、という具合に、1回目は親に手伝ってもらってくる子がほとんどです。それが2回目になると、「ぜんぶ」という言葉が飛び出します。最初は親に手伝ってもらった、という後ろめたさを刺激しないで見守ると、2回目に飛び出すのが「ぜんぶ」という言葉です。
「弁当の日」には、1年生から4年生は、ランチルームに並んだ5・6年生がつくった弁当をみたあとで給食を食べます。上級生が立派に詰めてきた弁当をみて、「早く5年生になりたい」という上級生に対する憧れの気持ちが生まれます。
「大人になりたがらない」現代の子どもたち。一人前になりたいという気持ちを引きだし、年上の人たち、そして自分の家族をみつめるようになるしかけが、「弁当の日」なのです。
※竹下さんの「弁当の日」は、『増刊現代農業』2008年2月号などで紹介されています。
【報告A】 食生活のみつめ直しから人と人の絆づくりへ 〜「お父さんの料理教室」20年の実践から〜
島根県川本町・お父さんの料理教室 堤浩隆さん
国や県の出先機関が集まり、単身赴任者が多く住む島根県川本町。単身赴任者の健康を気遣った家族から、町の教育委員会に「料理教室を開いてほしい」という相談が持ち込まれたのがきっかけで、1987年5月21日に第1回目の「お父さんの料理教室」が開催されました。管理栄養士に料理の基本を教わり、食材やテーマにこだわりながら料理に取り組んでいます。
ふだんの教室では、ハプニングもつきもの。つい先日は、砂糖と塩を間違え、せっかくのプリンが「塩プリン」になってしまいました。しかし、こうした失敗も仲間でフォローし合ううちに、教室の楽しい思い出の一コマに変わります。
「料理教室」の取組みは少しずつ地元に知られるようになり、イベントへの出店の依頼が舞い込むようになりました。「料理教室」ではそのための十八番料理として「広島風お好み焼き」をメーカーまで修行しにいったりと、活動にも広がりと深みがでてきました。
そんななかで思い出深い出来事が、阪神大震災での炊き出し活動でした。朝、コーヒーを入れていたところ、被災した人たちが集まってきて、家族や親類の話をしながら会話が弾みました。「食」が単なる栄養の摂取ではなく、根源的な営みであることを実感したといいます。
「お父さんの料理教室」がスタートして今年で22年目。料理教室200回記念の講演会や、2007年のレシピ集の刊行など、様ざまな企画で活動の節目を飾ってきました。毎年、異動によってメンバーは入れ替わりますが、新たな人と出会い、家族や友人食卓を囲む喜びを分かち合うことで人間関係を深めていけることが、「料理教室」の一番の醍醐味となっています。
※「お父さんの料理教室」の取組みは、「地域に根ざした食育コンクール2008」で優秀賞を受賞し、『食育活動』第14号で紹介されています。
【報告B】地場産給食からはじまった地域づくり〜「食と農のまちづくり条例」の実践から〜
愛媛県・今治市企画振興部企画課 安井孝さん
今治市では、昭和58年度から学校給食への地元産農産物活用に取り組み始め、昭和63年には学校給食の充実を通して地域農業の振興と健康なまちづくりを謳った都市宣言を採択しました。平成17年、12市町村が合併して都市宣言が失効すると、同年12月、同名の都市宣言を再び採択し、平成18年には「今治市食と農のまちづくり条例」が定められました。
今治市の地場産学校給食は、米は全量が今治市産の特別栽培米になっているのをはじめ、地場産の小麦を使ったパン、野菜などに拡大しています。特に、小麦は、パンの原料を輸入小麦から今治市産にかえたことによって、市内で小麦栽培が広がり、小麦の新たなマーケットが生まれました。平成15年には、今治における地産地消活動の集大成として「さいさいきて屋」が開業しました。
「食育」の取組みも広がりを見せています。小学校の総合学習のなかに「食育科」を設けて食育モデル授業を実施しているほか、市内の学校で活用する副読本もつくりました。最近では、「弁当の日」に取組む学校もでてきています。
調査の結果、周辺の自治体に比べて今治市の住民は地元の農産物を買う傾向にある点が裏付けられるなど、取組みの成果がでてきているとのことです。
※今治市の取組みは、『21世紀の日本を考える』(2005年8月号)で紹介されています。
【報告C】「食育」で進める地域づくりにおける大学の役割〜「ぎょしょく教育」プログラムの実践から〜
愛媛大学・南予水産研究センター 若林良和さん
若林さんは、愛媛大学南予水産研究センターが愛南町で展開している「ぎょしょく教育」プログラムについて報告しました。愛媛大学では、独立行政法人化をきっかけに、「地域で輝く大学」を理念に掲げました。その一環で取り組んでいるのが「ぎょしょく教育」プログラムです。
平仮名で「ぎょしょく」と書くこのプログラムは、単に魚を食べるということにとどまらず、「魚触」「魚色」「魚職」「魚殖」「魚飾」「魚食」を意味し、食材としてだけでなく、漁業や食文化も含めて「魚」を総体としてとらえるねらいが込められています。
地元ではイベントや調理実習が実施されるようになったほか、学校給食での魚の活用も進み、大学が直接かかわる場面はむしろ少なってきたそうです。愛媛大学での実践からは、「食育コーディネーター」としての役割を果たしている大学の姿が浮かび上がってきます。
プログラムの実例も紹介いただきました。天然のタイと養殖のタイは、色合いの違いで見分けることができます。水深30メートルくらいに生息している天然のタイは、全体的に白っぽい色をしているのに対し、養殖のタイは生活している水深が浅いため、表面が日焼けして茶色っぽくなっています。ただし、最近の養殖技術はかなり水準が高く、味は天然ものとほとんど変わらないだけでなく、日よけシートをかぶせて日焼けを防ぐ養殖方法も導入されているそうです。
※「ぎょしょく教育」プログラムの実践は、『食育活動』(2007年3月号)で紹介されています。
【ディスカッション】
コーディネーター 徳島県・阿波市立市場小学校 藤本勇二さん
4人の報告のあと、藤本勇二さんのコーディネートによるディスカッションが行なわれました。ディスカッションを通して、それぞれの取組みにおける仕掛ける側の想いとその手法を確かめ、全員で認識を共有していきました。
ディスカッションの後は、机の配置をかえて、交流会を行ないました。報告やディスカッションの時間にできなかった直接意見や名刺交換、来場者による自己紹介と活動のアピールが行なわれ、参加者どうしのネットワークづくりの場となりました。最後に、農文協中国四国支部の職員が一人ずつ自己紹介を行なって、セミナーは終了となりました。

(文責・食と農の応援団事務局)
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