東京大学名誉教授 今村奈良臣氏
農業法人の知恵とパワーで地域に活力を
──人を活かす 資源を活かす 地域を賑わす──
1、農業は生命総合産業であり、農村はその創造の場である
(1)日本の土地と水を活かし、食糧自給率の向上に全力を傾ける
(2)国民に四つの『安』(安全・安心・安定・安価)の農畜産物・食糧品を供給する
(3)水と緑で国民に豊かな保養空間と保健空間を創る
(4)都市・農村の交流をさらに深め、農と食の教育力を培う
(5)農村の伝統文化や先人の知恵の結晶を次世代に伝承し、豊かな心の拠り所を創る
2、食と農の距離を全力を上げて縮める
(1)世界一の健康長寿をさらに伸ばすための食のあり方を追求する
(2)食の安全性に対する国民の不信と不安を一掃するために、農畜産物の生産・加工履歴証明(トレーサビリティ)のシステムを確立する
(3)農畜産物の流通システムならびに販売戦略の改革を通じて、食と農の距離を縮める
(4)農業の六次産業化(1×2×3=6)の推進と、女性起業および高齢技能者の智力を活かす
(5)地域ブランドを確立し、地産池消、地域農産物による学校給食等、地域との連携を強化する
3、農業ほど人材を必要とする産業はない
(1)人材とは五つの要素(企画力、情報力、技術力、管理力、組織力)の総合力である
(2)「人多地少」の時代から「人少地多」の時代に変化したことを認識し、地域農業の新路線を方向づける
(3)家督、家産(田畑山林家屋敷)の継承者はいても、家業の継承者は激減しつつある現実を直視し、新たな農業経営のあり方を追求する
(4)イエ(農家)からヒト(個人)に着目する時代になった。青年、中堅、高齢技能者、女性、新規参入者等のもつ個性と能力を再組織し、農業の法人化をめざす
(5)個々の経営のあり方に着目するだけではなく、平等原則から公平原則への転換に立脚しつつ、地域農業・農村全体の新たな組織化と活路を追求する
4、トップ・ダウン農政からボトム・アップ農政への改革に全力をあげる
(1)中央集権的画一型農政の時代に終りを告げ、地域提案型創造的農政を推進する
(2)特に補助金制度改革の推進。中山間地域直接支払い交付金制度、産地つくり推進交付金制度は、その新しい方向を示す農政改革の起爆剤である
(3)価格政策から所得政策への転換を図り、経営所得安定政策を農政の基本路線とし、公平性、透明性、公開性を堅持する
(4)陳情政治、中央依存意識の徹底的改革と自己責任(at your own risk)の原則にもとづき、計両責任・実行責任・結果責任の所在を明確にする
(5)国際協約にもとづき、国際的に認められた政策、制度の枠組みならびに手法を前提とした政策体系を構築する
5、共益の追求を通じて、私益と公益の極大化を図る
(1)日本農業の歴史的特質は共益の追求にあり(水利権、入会権、漁業権等)、その現代的意義を明らかにし、諸資源を維持・管理・保全しつつ、多面的機能に生かす
(2)共益の追求はあくまでも手段であり、目的は私益(農業生産者の所得、生活水準の向上)の充実と公益(国民・消費者)の極大化にある
(3)農家という家督・家産・家業の世襲による長男社会構造を脱却し、農業経営者という優れた職業に対する自己選択の方向へ意識改革を徹底してすすめる
(4)地域農業の総合産業化と農業経営・集落営農の法人化、企業化に全力を傾ける
(5)農協(JA)は地域農業改革の司令塔になり、共益の追求に全力をあげなければ、組合員からも国民からも見放され、存在意義そのものが問われることになる
6、米政策改革の推進に全力を
(1)米政策改革、地域農業改革、JA改革は一体
(2)水田ビジョンの策定から実践へ
(3)「誰が」、「誰の土地で」、「何を」…10項目の実践(別紙を参照)
7、食料・農業・農村基本計画の改定と当面する農政改革
(1)農政改革の核心は何か
1)品目横断的な政策への転換
2)担い手・農地制度の改革
3)農業環境・資源の保全対策の確立
(2)改革の意図するところは何か
1)価格政策から経営所得安定政策へ
2)全階層バラマキ政策から対象特定構造政策へ
3)消費者負担型農政システムから納税者負担型農政システムへ
(3)集団的・自主的・自己選別の論理(注)
(4)イエ(「農家」)からヒト(青年、中堅、女性、高齢技能者、新規参入者等)の新たな組織化へ
(5)透明性、公開性、公平性、公正性の実現により国民(納税者)の支持を
(6)認定農家から農業法人化の推進を
(7)地域営農実践組合の法人化を
むすび
(1)21世紀農業は花形産業、農業法人の智恵とパワーで花形産業に
(2)多様性の中に真に強靭な活力が育まれる、画一化の中からは弱体性しか生まれてこない
(3)「我は我 されどなお問う 共と協」
(注)「農業構造改革の展開倫理」今村奈良臣著作選集 上巻、農文協、2003年10月、219頁。
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