新連載 コタローくんの農機メンテ心得帳
神奈川・今井虎太郎
その1 まずは格納のしかたから改善すべし
筆者(左、稲作約2.7町+野菜6反の経営)とサトちゃんこと佐藤次幸さん(倉持正実撮影) 私は、神奈川県で有機農業を夫婦で営む農家です。実家は祖父の代まで農家でしたが、父は農業をしておらず、私が再び始めました。お米と野菜を栽培、産直販売しています。これから1年、本誌の取材で知り合い、以来お世話になっている福島・会津のサトちゃんに教わった機械のメンテナンスについて書かせていただきます。
モノは増えてもお金は残らない…
第一回は、「格納庫の改善」です。
学生時代に本誌に出会い、身の回りのものを活かして暮らす楽しそうな農家を見て、「私もこんな農家になりたい」と思って就農したのが六年前になります。もちろん、お金はありませんでした。でも、機械などは中古で揃えれば、そんなにお金はかけずにやっていけるだろうと思っていました。
現在は、トラクタ・コンバイン・田植え機・管理機などの農業機械、鍬やスコップなどの農具、マルチやトンネルなどの農業資材を所有しております。鍬や鎌を買うところからスタートした私の経営も、機械やモノだけ見たら一端の農家らしくなりました。
少量多品目の野菜を生産しているので、モノはどんどん増えてきます。ただ実際やってみると、中古の機械を買っても修理代などが結構かかり、モノは増えてもお金は残らないことがわかってきました。そんな状態で、サトちゃんと知り合いました。
サトちゃんは、最初は機械作業を教える目的でうちに来てくださいました。しかし初めて来たときに指摘されたのは、まず格納庫の改善だったのです。
それまでの私は、日々の農作業に追われてモノは出しっぱなし、使いっぱなしで、農機具はドロドロ、鍬は雨ざらし、使おうと思ったときにモノは見つからないという状態。私自身も、せっかく大金を払って買った機械が保管で駄目になるのはもったいないなと以前から思っていましたが、後回しにしていた痛い点でした。
機械を長持ちさせる格納術
1 雨ざらし厳禁
私は、トラクタやコンバインを足場パイプで組み立てた小屋に格納していました。しかし、小屋の天井から雨漏りがしていて、雨が降ると機械が濡れていました。「機械は多少濡れても平気だろう」と思っていたのです。でもサトちゃんには、機械にとって「湿気は最大の敵」と言われました。
とくに田植え機やコンバインは、年間に2〜3日、多い人でも20日くらいしか使用しないのが一般的だと思います。そのほかの期間は、ずっと保管されていることになります。湿気が多いと、その間にどんどん錆びる。サトちゃんは、「1年間雨ざらしにすると10年分錆びる」と言います。
昨年、サトちゃんのご自宅にお邪魔して、格納庫を拝見しました。サトちゃんは、作業機を湿気の少ない格納庫の2階にしまい、徹底的に錆びを防いでいました。
私には、すぐにサトちゃんのような格納庫を用意することはできません。でも、せめて雨が防げるような簡易なビニールハウスを作り、湿気を防ぐことにしました。
2 シートで下からの湿気避け
湿気をさらに防ぐには、格納庫の風通しをよくすること、下がコンクリートでなく土の場合は、ブルーシートや軽トラの荷台に敷くビニールシートを敷いた上に機械を置き、下からの湿気を防ぐことが大事です。
3 紫外線カット
またビニールハウスの中に格納する場合は、機械が太陽からの紫外線で劣化しないよう天井を紫外線カットするビニールにするか、ブルーシートなどにしたほうがいいそうです。
改善前、格納庫内には雑然とモノが積まれていたが… 改善後。モノは奥の棚に収納。手前のスペースがフル活用でき、トラクタ・コンバイン等の大型機械を入れて整備することもラクにできるようになった イライラしない整理術
1 使用目的ごとの道具箱
使えば使いっぱなしでその辺にポイ、使いたいときにモノが見つからなくてイライラする。そんな私にサトちゃんは、「棚を作れ」とアドバイスをくれました。棚を作ってモノをちゃんとしまう癖をつければ、モノのある場所がわかってすぐに見つかります。
そのうえでサトちゃんは、工具箱、機械の掃除道具箱、スプレー・オイル箱などモノを使用目的ごとに箱に入れ、整理しやすいように管理しています。
さらに冬の農作業が暇なときに棚や道具箱を毎年一度整理して、必要でなくなったモノは捨てて、足りないモノは補充しておくと必要なときに困りません。いらない鉄製のモノは、タウンページで鉄のスクラップ回収所を探して持っていくとお金に換わる場合があり、得します。
2 マルチ幅統一で再利用
マルチやトンネルなども、とてもかさばって邪魔になります。私は、マルチのサイズを栽培する野菜に合わせて変えていました。すると何種類ものマルチを使うことになります。再利用しようと思っても、ゴチャゴチャになって管理できませんでした。
サトちゃんは、どの野菜も135cm幅のマルチに統一しているので、きれいにたためば何度も再利用できます。これまで年間何十kgもマルチのゴミを出していましたが、マルチを統一してきれいにたためば、何度も利用できてお財布にやさしく、環境にもやさしいです。
3 2階を活用
コタローくんの格納庫周辺。以前は竹林だった場所を切り開いて格納用のハウスも設置 イネの苗箱など、1年に一度しか使わないモノは結構あります。こういうモノは、納屋の2階に置くようにするといいそうです。ほかにも使わないコンテナ、出荷用の段ボールなど軽くてかさばるモノは、2階にしまいます。私の道具の整理は、まだまだ改善の余地があります。本誌の以前の連載「納屋・倉庫拝見」(2007年1月号〜09年12月号、2・6・10月号は除く)や、ホームセンターの棚の整理なども参考にしようと思っています。
4 機械まとめ置きでスペース確保
私はトラクタ2台、田植え機3台、コンバイン1台、管理機2台、ホイルローダーを1台所有しています。以前はこれらを家の敷地内バラバラに置いていました。でもサトちゃんに言われて、間口5.4m、長さ12mのハウスの中に収めました。大きな農機具も整理すると収まるもので、おかげでいろいろスペースができました。空いたスペースには石窯を作ろうかと計画中です。あとは1年に一時しか使わないトレーラ・アゼ塗り機・ハローなども、うまく整理できたらもっといいと思います。
できたら洗車場も欲しい
「使った機械は新品に戻す」というのが、サトちゃん流メンテナンスです。使った機械はすぐに洗い、ピカピカにすると嬉しくなって愛着が湧きます。水洗いも気軽にできるような、できたらコンクリート張りの洗車場をつくれるといいと思います。
機械を洗うと、泥汚れで気づかなかった機械の傷みに気づいたりします。また洗いながら眺めていると、機械の構造が少しずつわかるような気がします。サトちゃんに初めてお会いしたときに「ネジ一本から勉強しなさい」と言われました。機械は鉄の塊ですが、つなぎ合わせているのはネジか溶接です。機械の設計者も、無駄にネジを付けたりはしません。ネジ一つ一つに意味があり、設計者の意図があるはずです。機械を洗いながらネジや機械の形を眺めるとおもしろいかもしれません。
(赤松富仁撮影) サトちゃんからの「もう一言」
早めにコンクリ床の格納庫を
機械で借金するのは絶対ダメ。でも、機械はいつか壊れるものだから、常に「いつまで使いたいか」を考えてメンテするのよ。って言っても、10年使っても99%は寝てるわけだから、格納の仕方はすんげー重要ってこと。
最初の雨ざらし状態よりはだいぶよくなったけど、仮設のハウスとか小屋は、すぐ壊れるからね。その場しのぎで修理しながら…ってこともできなくはないけど、結局は金がかかる。だったら、ちゃんとコンクリを打った格納庫兼作業場を建てたほうがいいと俺は思うよ。将来自分がどういう経営をしたいかを真剣に考えて、できれば一生使えるのをね。もちろん、ちゃんとお金を貯めてからだよ。借金はダメ! そのためにも、まず余計なお金は出さない。機械はきっちりメンテやって、なるべく壊さないようにしないとね。(談)
(神奈川県伊勢原市)
コタローくんとサトちゃんのやりとりは、DVD「サトちゃんの 農機で得するメンテ術」(全2巻(1)トラクタ・田植え機編 (2)コンバイン・管理機・刈り払い機編 予価1万5750円 2012年2月発売予定)でご覧になれます。WEBでのご予約は「田舎の本屋さん」で承っております。
この記事の掲載号『現代農業 2012年1月号』特集:農の仕事は刃が命
包丁・ナイフ/ハサミ/刈り払い機/チェンソー/ケイ酸で超多収/挿し木苗の不定根を活かす/果樹の夢のような仕立て/直売所が後継者を育てるしくみ ほか。 [本を詳しく見る]『DVD サトちゃんの農機で得するメンテ術1 機械代・田植え機・トラクター編』農文協 企画 雑誌『現代農業』や大好評DVDシリーズ『イナ作作業名人になる!』でおなじみ、会津のサトちゃんは、メンテナンスも名人。農機を壊さず快調に使えれば、修理代減、作業の能率は上がってどんどん儲かる。持論は「作業する時間よりも、メンテする時間のほうが時給は高い」。といっても、難しい修理は必要なし。掃除や注油など、知ってさえいれば誰でもできるメンテのポイントを紹介。第1巻では、田植え機・トラクタのメンテナンスのポイントを動画でわかりやすく解説します。 [本を詳しく見る]
『DVD サトちゃんの農機で得するメンテ術2 コンバイン・管理機・刈り払い機編』農文協 企画 雑誌『現代農業』や大好評DVDシリーズ『イナ作作業名人になる!』でおなじみ、会津のサトちゃんは、メンテナンスも名人。農機を壊さず快調に使えれば、修理代減、作業の能率は上がってどんどん儲かる。持論は「作業する時間よりも、メンテする時間のほうが時給は高い」。といっても、難しい修理は必要なし。掃除や注油など、知ってさえいれば誰でもできるメンテのポイントを紹介。第2巻では、コンバイン・管理機・刈り払い機のメンテナンスのポイントを動画でわかりやすく解説します。 [本を詳しく見る]