月刊 現代農業2010年10月号 草を生やして枯らす、土を肥やす「山内式シート農法」
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シートをかけたウネ。
シートをかけたウネ。畑に植え付けしないときはシートをかけっぱなしにしておく

『自然農法に接近』 コーナーより

草を生やして枯らす、土を肥やす
「山内式シート農法」

山内 学

タネまき直後の雑草が
いちばんやっかい

 除草剤を使わないで野菜を栽培している人なら、誰しもタネまき直後の除草に苦労した経験があると思う。ここで雑草に負けると、作物の出来は散々になる。「現代農業」8月号「自然農法が知りたい」に登場した立派な農家の方々も、はじめはだいぶ草で苦労されたのではないだろうか。

 私は20歳のときに長野や北海道で農業を学んだときに自然農を知り、25歳でここ阿蘇に就農した。そのときから農薬、除草剤、化学肥料を100%使わない農業を貫いてきたが、一番の問題は雑草だった。

 いかに労力を使わず初期の雑草を抑えるか試行錯誤を重ね、皆さんにもおすすめできる方法が確立できたので、ここで紹介したい。

即効透水性防草シートで
雑草8割減

 私はこの方法を「山内式シート農法」と名付けている。使用するのは即効透水性のある防草シートだ。次のような流れで使う。

 (1)作りたい作物に合わせたウネをたてる。(2)シートを敷き、1〜2カ月程度寝かせる。(3)シートの下には雨水が浸透するため、雑草のタネが発芽する。しかし、優れた防草性のため雑草は枯れてしまう。(4)シートをはがし、タネまき、定植する。

 これでタネまき直後に生えてくる雑草が8割以上減る。ところどころ生えてくる雑草を取るのもラクで、それを取ってしまえば収穫まで草で困ることはない。

タネまき、定植の直前にシートをはがす筆者 シートをはがした直後のウネ。雑草が枯れている。ここにタネをまいていく
タネまき、定植の直前にシートをはがす筆者 シートをはがした直後のウネ。雑草が枯れている。ここにタネをまいていく

多品目栽培、
ずらし栽培にぴったり

 山内式シート農法には以下のような利点がある。

(1)土の保水性がよく発芽率バツグン

 耕したばかりの土は、フカフカで水が抜けやすく、タネをまいても乾燥で発芽しないことも多い。だが、1カ月シートを張った後のウネは、不耕起の畑と同じように土の水持ちがとくにいい。夏のニンジンの発芽率もいい。

(2)虫が出にくくなる 

 昔、ダイズの中耕除草の後に、虫がわいてしまうことがよくあった。このように耕すことで発生する虫の害も、シート農法なら心配いらない。とくに青物の栽培では、シート農法に変えてからかなり虫の被害が減った。

(3)作付時期の作業に余裕ができる

 作付けの前後は、農家はとても忙しく、気苦労も多い。タネまき前後の雑草を抑えるため、2回ぐらい耕耘機やクワで耕すこともあるし、除草剤がまかれたりもする。だが、一度ウネを立ててシートをしておけば、タネをまきたいときにシートをはがせばいいだけだ。草の心配なく安心して他の仕事ができるので、気持ちにも作業にも余裕が生まれる。

(4)多種類の作物をずらしてつくれる

 あるウネの収穫が終わったら、次に植える野菜用にウネを作り直して、シートを張っておく。これがシート農法の基本的な流れだ。シートをはがすだけでいつでもすぐ植え付けられる状態にスタンバイされている。これはやってみるとその強みを実感できると思う。

 とくに多品目で切れ目なく野菜を収穫したい中小規模の農家におすすめだ。少しずつシートをはがし、時期をずらしながらタネまきすれば、収穫をずらすことが簡単にできる。タネをまくたびに耕して肥料をまいてウネをつくって……という手順をいちいち踏まなくてもいいのがラクだ。効率もいい。

(5)緑肥や刈り草で、

ウネだけを効率よく肥やせる

 たとえばレンゲはチッソを固定するマメ科の作物だが、秋にウネをたててレンゲのタネをまき、これを翌年5月に刈り、シートを張る。2カ月もするとレンゲの根も葉も土に返り、雑草のタネもすべて生えて枯れてしまう。ウネが堆肥場になるため、堆肥を運搬したり、すき込んだりする手間が要らず、土もよく肥える。7月シートをはがしてすぐタネまき、定植できる(図)。

 1m以上の高さになる緑肥の場合、耕耘機ですき込むときロータリ部分に草が絡まる心配がある。だがシート農法なら刈ってウネに置いてシートをかぶせればいいので、緑肥の草丈を心配する必要もない。

 カヤなどの丈の長い青草を刈ってきてウネの上にかぶせ、シートを張っておくこともある。畑全面ではないので、量はそれほどいらない。とくに、ニンニクやタマネギなど、肥えた土を好む野菜を作付けする前にこうしておくといいものができる。硬い草の場合は分解に時間がかかるので、6カ月くらいシートをかけておいたほうがいい。

<山内式シート農法 基本の流れ>
(1)前作の残渣を片付けて、次作のためにウネを整える  (不耕起でもいい) (2)即効透水性の防草シートをウネ全体に張る(1〜2カ月間) (3)雑草のタネが芽を出すが、暗いので次第に枯れる (4)タネまき時期がきたらシートをはがし、すぐにタネまき・定植
ここで元肥を入れておくとよくなじむ

<緑肥を間にはさむ場合>
※ジャガイモの後、タマネギ・ニンニクの前など土を肥やしたいとき
(1)前作終了後、緑肥のタネをまいて育てる (2)緑肥を刈り、ウネの上にかぶせる(このときウネを整えておく) (3)防草シートをウネ全体に張っておく(2〜6カ月) (4)シートをはがしてすぐタネまき・定植
ニンジンの芽。タネの上にモミを薄くかける程度で、毎年きれいに発芽する
ニンジンの芽。タネの上にモミを薄くかける程度で、毎年きれいに発芽する

即効透水性のシートは
現代版の「ムシロ」

 山内式シート農法自体は私のアイデアではあるが、このシートは現代版の「ムシロ」であると考えている(私も最初はムシロや古ジュウタンを使っていた)。昔の日本の農家では、このようなムシロの使い方をしていたのでは、と思っている。

 わかってしまえば簡単な方法である。でも私はこれでだいぶ助かってきた。シート農法があるから農業を続けられていると思っている。これから自然派的農家を目指す人にも参考にしてもらえたら幸いである。

(熊本県阿蘇市一の宮)

※即効透水性の防草シートを筆者が販売しています

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

現代農業 2010年10月号
この記事の掲載号
現代農業 2010年10月号

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新版 緑肥を使いこなす 現代農業 2010年08月号

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