『茶のクワシロカイガラムシ防除必勝法』コーナーより
「たたき散布法」なら、茶株内にも薬液が届く、手が疲れない
小俣良介
専用ノズルを使わずに、
茶株内まで薬液を散布したいクワシロカイガラムシ(以下、クワシロ)は、茶株内の枝幹に寄生し、茶樹を枯死させる茶最大の難防除害虫である。茶株内に薬液が届きにくいため防除効果が得にくく、10a当たり1000リットルという多量の薬液を茶株内に散布するため、非常に時間や手間のかかる作業となる。
より効果的に散布できるよう様々なクワシロ専用ノズルが開発されている。これら専用ノズルの使用は高い防除効果が期待できるが、専用ノズルを付けると重くなってしまい作業しにくくなったり、株元に散布むらが生じたりする場合があるなどの問題がある。これまでクワシロの発生がなかった埼玉県では、専用ノズルの導入は新たなコストとなるうえ、茶園で初めて発生を確認してから機材を整備する場合、防除時期を逸することもある。
いっぽう、本県茶産地は北限に位置することから葉層は比較的薄く、通常の防除で使用するスズラン噴口でも、ていねいに散布すれば十分ではないかという生産者の意見もあった。通常の防除機材でクワシロが効果的に防除できれば、新たに発生を確認した場合の対策として、いち早くクワシロ防除に取り組むことが可能である。
そこで、通常の防除機材を使用し、しっかりと茶株内に薬液を散布する方法を検討した。
「つっこみ」散布は手が疲れる
スズラン噴口を使用したクワシロ防除の留意点として、茶株内にむらなく散布するため
(1)摘採面も忘れずに散布する
(2)茶株に噴口をつっこみ手首のスナップを利かせて噴出の向きを変える
(3)すそからも茶株内の枝幹に散布するなどの点が普及現場で指導されていた。以上が実施されれば、専用ノズルとほぼ同等の結果が得られると考えられる。しかし、実際にこのような散布を続けた場合、手や手首がたいへん疲れるという問題があった。
そこで、試行錯誤して検討した結果、散布用のかん注竿の噴口部分を摘採面に対してたたきつける、「たたき散布法」を行なうと、スズラン噴口でもしっかりと茶株内に薬液を散布でき、しかも手や手首が疲れにくいことが判明した。
「たたき散布法」なら万事解決
「たたき散布法」は、スズラン噴口の五頭噴口を使用し、ウネの摘採面中央から左側、右側をそれぞれ3〜4カ所に分けて、摘採面に噴口をたたきつけるようにして散布する方法である。噴口から噴出される薬液の霧の束が茶株内に差し込まれるようにしてたたき、たたく場所に応じて噴口の角度を少しずつ変え、いずれも茶株の株元に向くようにたたくのがコツである。
噴口をたたきつける順番 位置をずらしながら6回叩きつけてから、前へ進む
右ページの写真の1をめがけているところ。端っこをたたきつける場合は噴口を株元に向ける 噴口をたたきつける 噴口を持ち上げる 位置を変えて、またたたきつける
●つっこみ散布 噴口を茶株内につっこみ、手首のスナップをきかせる散布方法でも、茶株内によく薬液がかかるのだが…… このようにすると、勢いよく薬液が茶株内に入り込んで薬液の霧がよくまわり、枝幹に薬液がよく付着する。また、たたくたびに株元を狙うので、茶株内の深い場所にある株元にも薬液の付着むらが少なくなる。そのうえスナップをきかせる必要もなく手首があまり疲れない。ていねいにこの作業を繰り返して散布すると、ほぼ所定の散布量(1000リットル/反)を無理なく散布できる。
たたき散布だと、なるほど株元までかかった! 株内(葉層の下)に感水紙をつけた棒を設置し、水を使って散布試験をしてみました(感水紙は黄色で、濡れると紫になる)
●たたき散布法 ●通常の散布法――摘採面の少し上から噴口を左右にふりながら散布 株元までしっかり薬液が届いた。葉層の下にいるクワシロカイガラムシにも効果あり 茶株内では、真ん中の上のほうにしか薬液がかからなかった。摘採面付近にいるホソガやウンカにはこの散布方法でいいが、クワシロカイガラムシの同時防除をねらっても、効果は薄い しかし、茶園の葉層の状況や、噴射圧が弱かったり、竿を振る力加減により、茶株内に十分薬液が付着していない場合があるので、散布中は時折、手で茶株を割って茶株内の薬液付着状況を確認しながら行なうことが望ましい。
(埼玉県農林総合研究センター茶業研究所)
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