●巻頭特集 草と葉っぱの売り方ノウハウ
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農家の「葉っぱビジネス」ますます進化。
草を本気で栽培して、加工のしかたも極めて葉っぱをお金に変える。
ヒュー……ドロン、パッ『お茶で売る』コーナーより
クロモジ茶大ヒット
売上年間200万円以上
鈴木忠義さんとクロモジ茶「マタギ山恵茶」。ティーバッグ10個入り2000円で販売 秋田県北秋田市・鈴木忠義さん
2年目で売り上げ200万円に
秋田県北秋田市阿仁は古くからマタギの里として知られている。中でも根子、比立内、打当という三集落はマタギ文化が特に色濃く残る地域である。ここでクロモジ茶に今熱い視線が注がれている。
打当地区にある“かんじき工房”。主の鈴木忠義さんは以前ミニかんじき作りの話で「現代農業」に登場していただいた(2007年12月号)。かんじき仙人だった忠義さんが今はなんとクロモジ仙人に。いったいなぜ?
「いやあ、『現代農業』をもらってパラパラ見てたのさ。そしたら自分のことが出ている前のページにクロモジ茶の話が載ってたんだよ」
出会いは偶然である。まるで山の神の導きのようにクロモジ茶を知った鈴木さんはすぐにひらめいた。かんじきの材料は同じクロモジの木。かんじきに使わない細い部分はひょっとしてお茶にできるのでは? そうすれば無駄なくクロモジのすべてを使うことができる。
開花期のクロモジ。クロモジのお茶は血行をよくするため、飲んで膝の痛みが減ったという人は多い(撮影:菅原徳蔵) アイデアが浮かぶとすぐに実行するのがマタギの子孫。まずはクロモジ茶を作ってみた。
「自分で飲んで試してみたのよ。そうしたら体の調子がすごくよくなってな。これなら売れるんじゃないかって思ったわけさ」
クロモジ茶のよさを確信した忠義さんは本格的に商品化に乗り出す。最初はシンプルに、市販のお茶用パックに袋詰めにしてかんじき工房の隅に並べた。売れるかどうか半信半疑だったが、一つ二つと売れるにしたがって加速度的にさばけるようになった。一度使った人が再度注文してくれ、口コミも広がり、一度も阿仁を訪れたことがない人からも次々に注文が舞い込むようになった。
作り始めてわずか2年目で年間売り上げが軽く200万円を超えた。今では県や市の農政担当者が地域の名産品にしようと忠義さんの所へ頻繁に足を運ぶようになった。
水分20%以下までヒーターで徹底乾燥
ではここで人気のクロモジ茶の作り方を特別に公開してもらおう。
(1) 材料のクロモジの枝葉を6〜10月の間に採取する
(2) 大まかに裁断し乾燥
(2) 乾燥後粉砕して袋詰め
と書くと簡単で誰にでもできそうである。しかしどの工程にも仙人のこだわりがある。
(1)採取は近場ではなくてわざわざ奥山まで出かけている。より安全で質の高い材料を求めてのことだ。採取するのは直径1cm以下の枝葉(これより太い部分は秋にかんじき材料として採取)。
(2)よく乾燥させることが品質の保持につながる。忠義さんは天日乾燥はせず真夏でもヒーターをつけた乾燥室で強制的に乾燥。水分含有率は20%以下。
(2)粉砕は当初市販のミキサーを使ったがすぐに壊れた。より細かく粉砕するためにも10万円以上するプロ用の粉砕機を購入。
粉砕後ふるいに掛けて選別し、もっとも細かなものを急須でいれるティーバッグ用にする(その他は煮出し用)。その他にも袋を完全密封するためにシーラー(袋の端を熱でくっつけ密封する機械)を取り入れたりと品質の維持向上を常に心がけている。
乾燥、粉砕したクロモジの枝葉を手作業でティーバッグに詰める 左が微粉砕した急須用商品、右が煮出し用 「マタギの里かんじき工房」。入口にお茶を置いて、年間通じて訪れるお客さんにクロモジ茶を試飲してもらう マタギのイラストとロゴで商品力アップ
名称はクロモジ茶ではなく「マタギ山恵茶」。パッケージに阿仁マタギのイラストをあしらいロゴマークも制作した。これは商品力を高める戦略だ。
こうして工房の片隅で売り始めたクロモジ茶は現在6カ所で売られるようになった。しかし丁寧な手作りのために生産がなかなか追いつかない。それでも常に改良の余地を探り新たな工夫に余念がないクロモジ仙人。この姿勢こそが売れ続ける最大の要因ではないだろうか。 (取材・写真 田中康弘)