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朝、テレビをつければすべての局で天気番組を放送しているが、農家を対象にした天気解説は皆無のようだ。気象キャスターは、「傘を持っていきましょう」などと言うが、傘を片手に畑仕事はできない。また、週間予報は作業計画を立てる上でとても大切なのだが、今日明日の天気解説に比べてあまりに簡単過ぎる。もし私がお天気おじさんなら、「今日は一日中風がなく、マルチかけや薬剤散布には絶好の天気でしょう」とか、「苗の移植はまとまった雨の可能性が高い4、5日先の前日が狙い目です」といった解説をしたい。
風のない日を予想する
廣幡泰治
風枕。岡山県勝央町下町川から中国山地を望む(2009年5月29日、午後1時27分) ブドウを植えるのといっしょに気象予報士資格を取得
右の写真は、わが家の前に広がる田園風景である。奥に見える山々は那岐山(なぎさん)を中心とする中国山地である。中腹まで垂れ下がっている雲を「風枕」と呼ぶが、古くから広戸風(ひろどかぜ)という恐ろしい突風が吹く前兆とされてきた。どの程度の強風になるか事前に予測できていれば、風枕はとても綺麗で農作業の疲れを癒してくれる。
自己紹介を少し。私は横浜の電子機器メーカーに20年間勤めた後、早期退職して実家(岡山県)の広い畑の片隅でブドウ栽培を始めた。それまで気象とは無縁であったが、気まぐれな天気に農家がたいへんな苦労を強いられてきたのを子供の頃から見て育った。もちろん、それ以上に恩恵も受けていたはずで、農業を始めるに際し「気象の知識は必ず役に立つ」という思いから、ブドウの樹を植え付けたのと同じ年に気象予報士資格を取得した。
その後6年が経過し、ブドウ樹のほうはやっと経済年齢に達しつつある。予報も最初ははずしてばかりだったが、最近は同じはずすにしても大ケガをしなくなった。これからもブドウ栽培と天気予報、ともに技術研鑽していきたいと考えている。
天気マークや降水確率より天気図
最近の天気予報はずいぶん当たるようになったが、週間予報に関しては「コロコロ変わって当てにならん」との評価がまだ主流のようである。しかし、一見「コロコロ変わって」いるようでも、じつは「少しずれた」という表現が近い場合も多い。換言すれば、ずれ幅を見込んでおけば十分正確なのである。この「ずれ」は天気図を毎日見て初めてわかるもので、お天気マークや降水確率の数字の列を見るだけではけっしてわからない。
わが家の農作業を手伝ってくださる近所の「愛ちゃん」は天気番組を欠かさず見るそうだ。彼女は「予報より天気図を見たほうがわかりやすい」と言う。天気図が持つ情報量の多さを知っていて、「天気のずれ」はもちろん、雨の降り方さえも天気図から読み取っているようだ。この連載のなかではインターネット上のさまざまな天気図や気象データを紹介することになるが、皆さんもぜひ天気図をある程度読めるようになっていただきたい。
週間天気予想図を見てみよう
その天気図だが、北海道放送(株)(HBC)という地方テレビ局のホームページに、気象予報士が使う専門天気図が掲載されている。その中に「週間アンサンブル予想図(FEFE19)」というものがある。名前は難しそうだが、えらく大雑把で簡単そうな天気図である。これを頼りに1週間先までの風が最も弱い日を予想してみよう。
週間アンサンブル予想図
(日本気象予報士会提供、HBCのホームページ http://www.hbc.jp/weather2/pro.htmlより)
注)実際は6枚の天気図(8日後まで)が掲載されているが、誌面の都合により(6)は割愛
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図の数字と英文字が並んだ「131200UTC MAY 2009」は「13日12時00分世界時 5月2009年」という意味だ。「12時世界時」は日本時間の21時(=12+9)にあたる。つまり、この天気図は、5月13日21時(初期時刻)に得られた最新の気象データをもとに、8日先までの日々の天気を予想したということになる。(1)は初期時刻から3日後の16日21時の予想天気図であり、(2)は4日後の17日21時の天気図……と続く。
天気図の知識をお持ちの方はよくご存じだろうが、風の強さは等圧線の混み具合で、風向は等圧線の走る方向で決まる。地上風速のおおよその目安として、等圧線の間隔が天気図の南北の一目盛(天気図(1)の青矢印の間隔で約1100km)の場合には1〜2m/sの風が吹くとされる(海上や沿岸は除く)。この一目盛に等圧線が3本入っていれば3倍の強さ(3〜6m/s)の風が吹くことになる。ただし、高気圧の中心(Hマーク)付近は風が弱く、低気圧の中心(Lマーク)付近は風が強いことが多い。
高気圧がやって来る日は?
予想対象地域を岡山県の内陸部に位置する津山市とする(天気図(4)の緑矢印)。天気図(3)〜(5)を見ると、18日から日を追うごとに高気圧(Hマーク)が東に移動している。薄い青色の円で囲んだ部分はH周辺の風が弱い領域である。
この風が弱い領域が津山市を通過するのは19日の予想だが、タイミングが半日から1日程度ずれたり、あるいは移動コースが南北にずれる可能性もある。日程決めを1、2日延期できるなら、19日は仮決めとして様子をみるのがコツだ。ちなみにこのときは、2日後、15日21時時点の予想を見ても19日の日中に津山市を通過するのは間違いなさそうだった。
さて、実際の天気はどうだったのだろうか。17〜21日の天気と風の実況を表にまとめた。この5日間の中では19日の風が最も弱く、予想は当たったことになる。
2009年5月17日〜21日の天気(岡山県津山市)
日付 平均風速
m/s最大風速
m/s最大瞬間
風速天気 最高気温
℃最低気温
℃降水量
mm17日 1.4 3.0 4.2 雨 18.8 15.0 9 18日 1.8 6.2 10.4 晴れ 25.8 10.8 − 19日 1.1 3.0 5.0 晴れ時々
くもり26.7 10.3 − 20日 1.3 4.7 7.2 晴れ後
くもり30.7 10.9 − 今回は大成功だったが、いつもこのようにうまくいくわけではない。じつは天気図FEFE19だけでは不十分で、他の天気図も併用するとさらに精度が上がる。今後、機会があったらご紹介したい。 (岡山県勝央町、気象予報士)