●巻頭特集 発芽名人になる!
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高いタネをムダにしないため、
畑を早くまわしたり、欠株を出さないためにも
発芽をよくしたい。
芽が出にくいといわれる野菜や花でも
100%発芽をめざす技、満載。発芽も常識を疑うと―
筆者。指先にのっているのが芽出ししたピーマンのタネ。濡らしたガーゼなどにタネを包んで、肌身離さず抱いていると、寒い時期でも1週間で芽が出る(写真は*以外、赤松富仁撮影) トウモロコシはヘソを下に
ソラマメは胚を横向きに播く青木恒男
おなじみの青木恒男さんは「発芽名人」でもあった。タネも「常識を疑う」と発芽率は限りなく100%に近づく!?
作物栽培の第一歩はまずタネ播きからです。しっかり立てた作付け計画も、播いたタネの発芽率が低かったり揃いが悪かったりでは後々の栽培管理にまでずっと影響を与えてしまいます。また、「3〜4粒播いて生育のよいものを残して間引いてください」という指導なども多いのですが、同じ重さの金より高価なタネもざらにあるのです。
昔とは違い、最近の市販種子は発芽促進処理などが済んでいるものも多く、一定の発芽率は保障されているので袋から出してすぐ播けるのは便利です。が、現実はそれほど甘くない。タネは温度・水・酸素の3つが揃えば必ず生える、と小学校では習っていても、休眠性やら好光性・嫌光性やら寿命やら、なかなかにデリケートなのです。
ストック は3年ものの古ダネがいちばん揃う
私が年間に購入するタネの中でもっとも高額なのはストックですが、この花は簡単に自家採種できます。春先に採ったタネをその年の夏にすぐ播種できれば大きなコストダウンです。が、実際には休眠しているタネが多くて使えません。何年か冷蔵庫に眠らせておいた古ダネは発芽率が高くて揃いもいいので私はそのようなものを使います。市販のタネも3年くらい冷蔵庫に眠らせてから使うと揃いが抜群によくなります。ナスやトマト、スイカなども古ダネでいけます。しかしネギ、ニンジン、レタスなどは保管方法が悪ければ翌年にはもう発芽しなくなります。
冷蔵庫に寝かせてあったストックのタネ。なんと8年前のものもある このようにタネにもいろいろありますが、値段は決して安くありません。せっかく購入したものならば一粒たりともムダにせず、収穫までもっていきたいものです。今回はそんなタネで損をしない、知っておくとちょっと便利な私なりのタネ播き方法のいくつかを紹介したいと思います。
トウモロコシ はへソを下にして播く
▼まずはタネの構造を知ること
トウモロコシの種子を切断すると図1のような姿をしています。どのように発芽するのか、構造を見ればだいたいのことがわかります。胚には根になる部分と茎葉になる部分が最初から用意されていますが、根は通称ヘソと呼ばれるとがった先端に向かって、葉はその反対方向に向いています。
種皮が吸水すると、表面が黄色く見える胚乳に貯蔵されていたデンプンが糖に変化して胚盤を通して胚に供給され、根と葉が種皮を破って発芽します。
「向きを考えて播くなんて時間がかかって大変じゃないんですか?」と聞くと、「そんなことないですよ。事前にタネを置くでしょう。向きが見えるから、指でちょっと挿していくだけです。ふつうに播くのと変わりませんよ」 トウモロコシのタネ。この向きで播く ビシッと揃った定植前のトウモロコシ苗(*) ▼タネの向きで発芽にバラツキが出る
トウモロコシは胚乳を地下に残したまま発芽するタイプの種子なので、土の中に播かれたときのタネの向きによって発芽までの期間がバラツキます。たとえば横向きの場合には芽がタネを迂回する分、時間がかかりますし、ヘソが上向きの場合には根が乾燥して生育が止まったりもします。土壌水分が高過ぎると根を伸ばさずに葉を優先的に伸ばしますので、2、3日この状態が続くと種子根は枯れてしまい、冠根が発生するまで1週間以上生育が停止します。また、なかには酸欠状態で腐ってしまうタネもあります。
▼とがったヘソを下に挿せばほぼ100%発芽
トウモロコシの播種には通気性のよいピートモス主体の培土と128穴セルトレイを使用し、タネのとがったほう(ヘソ)を下にして真直ぐに差し込みます。播いた後にたっぷりかん水。酸欠と過湿を防ぐため覆土はせず、表面が乾燥するようならば濡れ新聞か苗箱で日覆いをします。
とくに味来などの最近の強甘味黄粒種のスイートコーンは一般的に発芽率が75〜80%とあまり高くないように思われていますが、この方法だと100%近く発芽しますし、生育の揃いも非常によくなります。品種にもよりますが、とくに早出しをねらう低温期の育苗が難しい時期には有効です。
一穴3〜4粒播きの直播き栽培に比べると、一粒播き100%発芽の移植栽培のほうが種子代、作業時間ともにコストは半減します。
図1 トウモロコシ種子の断面 図2 タネの向きで発芽の仕方が変わる ソラマメは「オハグロを斜め下にして」だけじゃ不十分
▼胚が真横になることが大事
一寸ソラマメのタネは手でつまんで向きを見ながらズボッと挿す ソラマメは直売所でも人気野菜のひとつですが、タネ播きは「オハグロを斜め下にして」という説明をよく聞きます。しかし、これは正確ではありません。オハグロを下にして見ると胚が付いているほうが厚くなっているはずなので、こちらが真横になるように播くとスムーズに発芽します。また、水田裏作の直播き栽培など、重粘な土質で過湿が心配なときにはタネの先端を土から少し出して呼吸できるようにしてやります。(図4‐1)
逆方向のオハグロ斜め下では芽がタネの内側に生長してしまい、発芽に時間がかかったり胚乳の中で腐ってしまうことがあります。(図4‐2)
ソラマメの中でもとくに一寸ソラマメのタネは一粒20〜30円と高価なので、私は発泡スチロールのトロ箱などで育苗してから本圃場に定植するようにしています。トロ箱に深さ10cmほど無肥料の洗った川砂を入れ、図4‐1の向きで5cm×5cmの間隔にギッシリ播きます。たっぷりかん水し、緑の芽が出たら直根が発達する前になるべく早く移植します。この方法だと発芽率は100%近くなります。
過湿の心配がない砂質の畑ならば平播きでも問題無いでしょう。(図4‐3)
図3 ソラマメ種子の断面図 図4 マメの向きで発芽の仕方が変わる マメ類 は肥料気のない土が鉄則
マメ科の作物にはソラマメやエンドウ、アズキなど地中にマメ本体を残して発芽する種類と、インゲンやエダマメのように地上までマメを持ち上げて発芽する種類があります。これらマメの姿形はさまざまですが、どれも発芽時の土中の肥料濃度に弱い共通の性質を持っているので、環境のよいセルトレイで育苗後移植栽培するのが安全です。
大きな子葉は養分をたっぷり蓄えて肥大したものなので発芽時に土壌の肥料は必要ありません。このときタネが吸水すると体積は四倍くらいに膨れますが、肥料も一緒に吸収されると腐りやすくなります。肥料気が少なく粘土質や砂を含んだ保水性のよい培土を使い、とくにインゲンのようにタネを地上へ持ち上げる力が強いものは、土の重しでタネの持ち上がり(乾燥)と皮被りを防いで発芽させます。過湿に弱いので播種前の浸種も播種後のかん水も禁物です。
マメ類は直根性の作物なので定植は早めに行ないますが、エダマメだけは根を切って植えたほうが側枝が多く出て収量が上がるので、播き床に密播きしてゴボウ引きして植えます。
オクラ や トウガラシ などは体に抱いて芽出し
そのほかのタネでは、オクラ、トウガラシ、ピーマン、ナスやトマトなど硬い種皮に包まれたタネは発芽までに日数がかかりがちです。が、通気性のよいペーパータオルやガーゼなどに包んで水に浸したあと自分の体に肌身離さず抱いていると低温期でもタネは動き出します。幼根が種皮から出るのを確認した後播種します。直売所で早出しをねらうときなどは便利です。
(三重県松阪市久保町)