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大面積をこなす場合、失敗すると損失はでかい
品種選びはシビアな世界
特性を上手に引き出す見方や選び方がものをいう
青木東洋さん。約5.5haの畑でレタス、ブロッコリー、エダマメなどをつくる。手に持っているのはサニーレタス。品種は横浜植木のキュアレッド2号(赤松富仁撮影) カタログはまず系統を見る
謳い文句は逆読みするレタス 茨城県八千代町・青木東洋さん
46ページからの特集に登場した直売所名人たちのタネの買い方はじつに多彩だ。目新しいものを探したり、人と重ならない時期をねらったりと情報収集に余念がない。では、大面積をこなす産地の野菜づくり名人たちは、どのようにタネを選び、買っているのだろう。
まずは茨城県八千代町で仲間と農事組合法人「四季菜くらぶ」を立ち上げ、レタスやブロッコリー、ニンジンなどをつくる青木東洋さんに話を聞いてみた。取り引き先の業者からも品質のよさには一目置かれるグループの技術リーダーだ。
まずは「系統」を見る
「品種の選び方は難しいですよ。販売形態によって求められるものが違うので、その作物のことをよく知らないといけませんからね。
新しいものを入れるとき、その品種がどんな性格かをイメージするにはメーカーのカタログしかないでしょう。玉レタスだったら、まずは系統を見るとおおよそのことは掴めますね」
レタスに力を入れているメーカーのカタログには、その「系統」がちゃんと書いてあるという。さっそくツルタのタネやカネコ種苗などのカタログを開いて見せてもらうと、品種の写真の下にある特徴説明の冒頭に、たしかに「サリナスタイプ」「エンパイヤタイプ」などと書いてある。
どういう血筋の品種かわかれば、暑さに強いか、寒さに強いか、大きくなりやすいか、結球しやすいか、肥料に敏感か鈍感か、雨に強いか弱いか、病気にはどうか、などの傾向がわかるのだそうだ。
青木さんに教えてもらったレタスの系統の見方が下の図1のとおり。これらを知ったうえでつくれば、畑の選び方なども違ってくる。大きな失敗をする可能性は減りそうだ。
図1 レタスの主な系統と性質
〈環境〉 〈肥料〉 〈病気〉 〈その他〉 青木さんが播く目安(茨城の平地) 暑さに強い
乾燥に強い敏感(吸肥力がある) 腐敗病に弱い
斑点細菌病に強い玉が肥大しやすい
色が薄い8/1〜8/10 やや暑さに強い
雨に強い鈍感(暴れにくい) 腐敗病に強い
斑点細菌病に強い結玉しやすい(小玉傾向)
色が濃い8/17〜15 中低温型
雨に強いやや鈍感(暴れにくい) 腐敗病に強い
斑点細菌病に弱い玉が肥大しやすい 8/20〜 中低温型 やや敏感(吸肥力がある) 玉が肥大しやすい
色が濃い8/25〜 カタログは逆読みする
▼耐暑性=遅く播いちゃダメ
図2 青木さんグループの秋どり玉レタスの作型 青木さん曰く「レタスの本当の収穫適期は2日」。たった1日の遅れで葉が硬くなり、ガチ玉になってしまう。そうなると契約先の評価もガクンと落ちるのでレタスの品種選びはシビアだ。
「『カラスの1年は人間にとっての16年』っていいますけど、レタスの1日もそれくらい大きいんです」
だから青木さんはカタログも一歩突っ込んだ読み方をする。たとえば「耐暑性がある」と書いてある品種。これを青木さん流に読むと「低温に弱い」となる。8月に播ける秋どり品種に多いキャッチフレーズなのだが、これらを少しでも遅播きすると、生育適温から外れて、外葉が育たず、結球しなくなってしまう。今シーズンはそういうことがテキメンに現われた。
「08年の夏は暑かったでしょう。あのとき耐暑性のあるエンパイヤ系品種がよくできたから、これはいいって、たくさんタネを買った人が多かった。メーカーも『いいよ、よくできるよ』ってすすめましたからね。でも、今シーズンは冷夏だったから、その品種が適応できた温度帯はほんの1時で、多めに播いた人は後半結球しなくて、大ごとでした」
耐暑性を謳った品種(マックソイル系が混じったもの)が特性を発揮する播きどきは、たった5日くらいしかない、と青木さん。高温には強いが適期幅は短く、決して遅く播いてはいけない品種、と読むべきなのだそうだ。
図3 どちらも8月頭から播けるレタス品種どっちを先に播く? 8月頭播きなら「極早生」より「耐暑性」を選んだほうが安全 ▼極早生=早く播いちゃダメ
また「極早生」「生育適期が幅広い」と謳っている品種がある。これも8月から播ける品種だが、極早生だから、とうぜん早く播いたほうがいいとふつうは思う。しかし青木さん、そうは見ない。
「極早生」とは生育期間が短いこと。「生育適期が幅広い」とは高温にも低温にも多少強いということ。ただ「耐暑性がある」とは書いてないので、先の品種に比べると暑さに弱い。だから8月頭から早播きすると高温障害を受ける可能性がある。極早生+生育適期が幅広いとあったら、「遅く播いても早くとれるもの」と読む。
▼極早生は肥料に敏感!?
さらに、こんなことも想定する。極早生は生育期間が短いので、初期生育が旺盛。肥料吸収も強い。つまり肥料に敏感な少肥型タイプ。前作がブロッコリーなどで、残渣の肥料分が多いところでは暴れる可能性がある。肥料を減らすか、なるべくやせた畑でつくったほうがいい。ただ、系統が肥料に鈍感なマックソイル系などだったら、多少は大丈夫かもしれない……。
系統を見たり、カタログの言葉を突っ込んで読んでいくと、その品種の活かし方が想定できる。これが青木東洋流の見方だ。
カタログを見る青木さん。ちなみにタネはグループで地元種苗店から買う 新品種より安い古い品種が使えることも
また、カタログは1ページ目を開くと必ずメーカーがいちばん力を入れている品種が出てくる。他社に先駆けて、うちはこれで勝負! というものだ。新しいものは改良されていて、じつによさそうに見える。だが長所短所もわからず大量に入れてしまうと大失敗、大損なんてことがあると青木さん。だから品種特性を読み込んだうえで、試験栽培が大切。想定どおりにいくか確かめてから使う。
いっぽう古い品種は、カタログの後ろのほうにちょこちょことまとまって「まだいちおうありますよ」ってな感じで載っているが、使い方によっては特性を逆に活かせることもあるそうだ。
たとえばエクシード(日東農産)。エンパイヤ系の暑さに強い品種だが、新品種に比べるとタネ代はなんと4分の1。揃いが悪いのが欠点で一斉収穫には向かないが、労力が足りないときに組み入れると、いくぶんダラダラ収穫できるので、適期を逃さずラクにとれる。
読み違えてしまう作型表
カタログにある作型表にも青木さんは一家言ある。書き方によっては読み違えてしまうケースがあるという。図4の左のような書き方は、よく見る形だが、収穫期幅の狭いレタスでは不親切だと青木さん。
「僕らは契約栽培だから、毎日切らさないように計画的に出したい。だから作型表はまず収穫日から見て、逆算して播種日を決めていきます。
たとえばこの作型表(図左)は夏に播く品種のカタログにあったんですけど、収穫期幅が1カ月以上も長く書かれてますよね。早播きの場合と、遅播きの場合でそれだけ収穫期幅があるということですが、これだと遅く播いた場合の収穫開始日がわからない。計画を立てるときに読み取りにくい。
それと、この作型表はへたをすると『この品種は収穫期幅がずいぶん長いんだなー』と読んでしまう人も出てくる。すると播種日もそんなに厳密でなくてもいいような気分になって、遅く播きすぎて結球しなかったと大騒ぎしたことがありました」
青木さんが希望するのは下の図4の右や中央のような書き方の作型図だ。
図4 作型表の見方「レタスは収穫適期が2日くらいだから、播種日と定植日が点で書いてあったら、収穫日もほんとうは点で書くべきだと思います」と青木さん。中央・右はいつ播けば、いつとれるかがわかるが、左はわかりづらい
この記事の掲載号『現代農業 2010年2月号』直売所名人はどうやってタネを買っているか/もっと活かせるカタログ情報/直売所農家のタネ選び/私のおすすめ品種・売り方/身体が喜ぶ健康品種/品種で病害虫に対抗 ほか。 [本を詳しく見る]
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