新規需要米の多収に腕が鳴る
飼料米 ねらえ超多収
ふくひびき 稚苗密植の堆肥栽培で目指すは1tどり
福島県会津坂下町・五十嵐清七さん
長めの栄養生長でデンプンを貯め、密植でモミ数確保
「日本で畜産を続けていくためには、米を飼料に使っていくしか道はない」。自身も繁殖牛を飼う五十嵐清7さんはそう信じて、約10年も前から飼料米をつくってきた。そして現在はJA会津みどり飼料米研究会の代表として、反収1tを目指す栽培を呼びかけている。
品種 ふくひびき 栽培の特徴 ・稚苗を坪70〜80株、1株6〜7本の密植
・牛糞堆肥2t投入・尿液肥で追肥収量 最高960kg 品種は「ふくひびき」。数ある多収品種の中でもこれにこだわるのは、ジャポニカ系の品種であるから。多収だけを目指すなら、インディカ系の品種のほうがいいかもしれない。でも日本でつくるなら、やっぱりジャポニカ系の品種で勝負したい。そのほうが日本の気候風土に合っているような気もするからだ。そこで五十嵐さんは、10年にわたってふくひびきの性質を研究し、インディカに負けないくらい多収するためのコツを追究してきた。
まずふくひびきは、分けつは少なく大きな穂をつける傾向がある。そして「急いで体をつくって穂をつくろうとする」性質があるという。
たとえば食用のひとめぼれ同様に中苗で植えると、分けつは少ないのに幼穂形成期も出穂期も確実に何日か早い。作業的には都合がいいのだが、これでは超多収は狙えないと五十嵐さんは考える。モミ数が制限され、さらに栄養生長の期間が短い分デンプンを十分に貯められず、大きな穂を完全に登熟させられないからだ。
そこで五十嵐さんは、あえて稚苗で坪70〜80株、1株6〜7本の密植にする。そのほうが茎数が多いからモミ数を十分に確保できる。しかも中苗で植えるひとめぼれと比べて出穂期が2〜3日遅くなるくらい栄養生長期間が長くなるのでデンプンが貯められ、稔りもよくなるのだ。
堆肥で葉色を落とさず
穂肥には尿液肥またふくひびきは、一度葉色が落ちると追肥をしてもなかなか再び上がらない。そしてコシヒカリなどと違い、色落ちさせてしまうとデンプンが溜まりにくい性質がある。だから多収するためには、常に葉色が濃い状態を保たねばならないという。
そのために重要なのが、堆肥の使用。
もちろん化成肥料も、チッソ分で元肥に約8kgと大量に入れる。しかしこれだけ入れても、化成のみだと葉色を維持するのが難しいので反収800kgがいいところ。もっととりたいと元肥に10kg入れてみたこともあるそうだが、さすがにそこまで集中して入れると、倒伏に強いふくひびきでも倒れてしまったそうだ。
でも堆肥なら、気温の上昇に合わせてチッソ成分がジワジワ出てくるので葉色を落とさずに後半までゆっくり効く。五十嵐さんは完熟牛糞堆肥を毎年約2t入れるので、化成の8kgに上乗せして約4.2kgものチッソ(チッソ分は0.3%だが、経験的に70%くらいが効くと思っている)が入ることになるが、それでも倒伏することはなく、むしろ収量を上げる方向に効くという。
さらに天候がよければ出穂20日前を目安に追肥もする。これは研究会の栽培暦だと化成肥料で2kgとなっているが、五十嵐さんは自分の牛の尿液肥をチッソ2kg分(約800リットル)流し込む。化成の追肥同様の効果があり、コストも減るので非常にいいのだ。
こうして栄養生長期間を長くとり、葉色を落とさずにつくった結果、最高収量は960kgに到達。しかもタンパクは約8%と高めで、飼料としても優れた米ができる。
ただし問題は、現在のやり方だと化成肥料を大量に使う分、結構コストがかかること。そこで五十嵐さん、将来は地域の畜産農家の協力も得て、元肥の化成肥料の代わりに大量の尿液肥を使い、堆肥も4tくらいに増やすやり方はできないかと考えている。そこまでやれば、はじめて本当の意味で地域の資源を活用した循環型の農業を確立できると思っているのだ。
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