●巻頭特集 こうじ菌バンザイ
竹林で見つけた土着菌、白くてフワっとした形から通称「ハンペン」と呼ばれる塊を持つ熊田さん(写真はすべて倉持正実撮影) 土着菌を採る竹林は、自宅から歩いて5分もかからないところにある山の麓 ボカシに使う畑で殖やす
こうじ菌の宝庫、竹林から 土着菌を採る、ボカシに使う
福島県白河市・熊田正典さん
熊田正典さんも、野山のこうじ菌をうまーく使って極上ボカシを作る一人。「香ばしいニオイで、田んぼで使ってもわいたりしない」
かつて市販の微生物資材で作ったこともあるが、コツがわからずに、ハエがわいて大失敗した。ちょうどその頃『現代農業』で見た竹林の土着菌(いわゆる「ハンペン」)を自分の山で探してみたところ、まんまと発見。以来作り方にも工夫を重ね、今ではまず失敗なくボカシができるようになった。
そんなありがたいものだけに、「土着菌は貴重品」。採りにいくのは一年のうちでも晩秋ごろ、キノコの出る時期と決めている。もちろんいつでも山に行けば土着菌はあるのだが、夏場はハンペンが薄くて見つけにくいし、採ってしまうのもかわいそう。キノコの出る時期ならハンペンも厚くなるので、安心していただくことができる。
涼しい春先や晩秋も、こうじ菌の好きな季節。念のため熊田さんのハンペンがどんな菌でできているのか野山の土着菌に詳しい薄上秀男さんに見てもらったところ、やはり「ほとんどは黄こうじ、日本の昔っからのこうじ菌です」。
昔は山で集めた落ち葉を家畜に踏ませて堆肥にした。あれはあれで土着菌を入れる知恵だったんだろうと熊田さんも振り返る。
では熊田さんの土着菌の探し方、使い方を見てみよう。
土着菌を採る
土着菌を採る竹林は、北東向きの斜面なので、夏場の午前中以外はあまり日が当たらない。かつてはハゼかけに使った真竹にクヌギなどの雑木も混ざり、今は手入れもほとんどしていないため鬱蒼としている
地面を見て歩くだけではどこにあるか全然わからない。とりあえず鎌などで落ち葉をどかしながら探っていく。「落ち葉が熟したようなところにある」から、落ち葉がたくさん積み重なっているようなところが狙い目 大物を発見。落ち葉をどかすと、土着菌の「ハンペン」が1mくらいの範囲に広がっていた。熊田さんは、いくつかハンペンを見つけて、中でも大きめのものから一度に使う分だけちぎって採る。「貴重品」なので、あとは翌年まで育てるのだ。採った跡は落ち葉で埋め戻しておく ハンペンの表面をつまみあげると、白い菌糸が伸びるようにしてはがれる。薄上秀男さんに聞いたところ、「この白いところは全部『黄こうじ』」とのこと そうそう。ボクはこういうところが好きだよ タネ菌を培養する
熊田さんは、どんぶり1杯のご飯にだいたい同じくらいの体積のハンペンを混ぜて土着菌を培養する。こうすると「白い菌」が増えてきた状態でボカシのタネ菌に使えるので、活力が高い気がしている
熊田さんは、どんぶり1杯のご飯にだいたい同じくらいの体積のハンペンを混ぜて土着菌を培養する。こうすると「白い菌」が増えてきた状態でボカシのタネ菌に使えるので、活力が高い気がしている 湿らせた杉の木箱の中で、細かくちぎったハンペンとご飯をよく混ぜてから、発酵中の堆肥(クズ米とモミクズを積んだもの)の上に置く。堆肥の内部は60度以上になっているので、木箱の底が40度くらいになるように深さを調整。この方法なら「コタツよりも温度は一定」 4日間培養したタネ菌。ご飯粒とハンペンの間にビッシリと菌糸が張っている 最初は菌からご飯粒に伸びてた菌糸が、そのうちご飯粒から伸びてくる。それが感動的。今生まれてきたみたいな感じで 米ヌカボカシをつくる
材料
・米ヌカ…150kg
・モミガラ…米袋1袋
・50度くらいのお湯…15リットル
・タネ菌…どんぶり1杯くらい熊田さんは、どんぶり1杯のご飯にだいたい同じくらいの体積のハンペンを混ぜて土着菌を培養する。こうすると「白い菌」が増えてきた状態でボカシのタネ菌に使えるので、活力が高い気がしている 湿らせた杉の木箱の中で、細かくちぎったハンペンとご飯をよく混ぜてから、発酵中の堆肥(クズ米とモミクズを積んだもの)の上に置く。堆肥の内部は60度以上になっているので、木箱の底が40度くらいになるように深さを調整。この方法なら「コタツよりも温度は一定」
温度が下がらないよう、すばやくモミガラの部分を浅く切り返して軽く米ヌカと混ぜ、次に切り返した部分が隠れるくらいに米ヌカを被せ、最後に上からムシロを被せて発酵が始まるのを待つ。「仕込み終わった時点で船形の内部が20〜30度であれば、間違いなく発酵は始まる」 仕込んで4日後の船形の断面。米ヌカの層とモミガラ混じりの層とに分かれているが、温度が40度くらいまで上がってきたので、この後初めて全体を切り返した。仕込み後1週間くらいはこうじ菌を十分に働かせたいので、40度を超えないよう、温度が上がってきたら切り返す。またパサパサすぎず(握ってもあまり固まらないくらい)の水分を保てるよう、乾いていたらジョウロ1杯くらいのお湯を足すこともある。 その後温度が50度くらいに上がり、納豆のようなニオイになってきたら1日1回切り返す。1カ月くらい経って温度がまた40度くらいに下がり、香ばしいニオイになってきたら完成
仕込み4日後のボカシをよく見てみると、米ヌカからポヤポヤと白い菌糸が伸び始めているほか、灰色っぽい菌が見えるところもあった。薄上さんによると、白いポヤポヤの菌糸は黄こうじ、灰色っぽい菌はケカビらしい。ケカビも糖化力は強く、こうじ菌とほぼ同じような働きをする。ニオイは味噌や甘酒のような甘い香り さあ。どんどん糖化するよ 同じやり方でクズ大豆ボカシもつくります。これはチッソ7%の即効性有機肥料 (2006年10月号参照) ![]()
この取材時に撮影した動画(熊田さんが土着菌を探し出し、米ヌカボカシをつくる様子)が、ルーラル電子図書館でご覧になれます(http://lib.ruralnet.or.jp/)。
この記事の掲載号『現代農業 2010年1月号』こうじ菌バンザイ ほか。 [本を詳しく見る]
『発酵肥料のつくり方使い方』薄上秀男 著 経験的な本はあるが、製造法・効果的使い方、効果発現のメカニズム、発酵菌の自家採取法について、ここまで科学的に緻密に書かれた本は皆無。巻頭カラーページで発酵過程、土着菌採取の方法をビジュアルで解説。 [本を詳しく見る]
『発酵肥料で健康菜園』薄上秀男 著 著者は普及員時代、農薬中毒、肝臓病、糖尿病など様々やまいを併発したが、退職後自らの健康回復のために自家用菜園に励み、奇蹟的に健康をとりもどした。著者は発酵肥料を長年研究普及してきたが、作物も人間も麹菌や納豆菌、乳酸菌、酵母菌などが合成するアミノ酸やビタミン、ミネラルが健康を司るものであることを体験から確信する。醗酵肥料で活躍する微生物は、人間の胃や腸内でも同様な仕組みで活躍している。本書は健康になるためには、どんな野菜をどのように作って、どのように日常的に食べていったらよいかを実践的に紹介する。 [本を詳しく見る]
『土着微生物を活かす』趙漢珪 著 世に出回る活性化資材はあまたあるが、山・竹林・稲・自然の植物にすむ微生物を採取して作った活性化資材を利用する農法は皆無。天恵緑汁・漢方栄養剤・酵素等を栽培・飼育に活用する韓国自然農業の技術を全面公開! [本を詳しく見る]