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暮らしと経営
荒川睦子さんの干しナス
荒川睦子さんの干しナス
(富山県福野町)

干したら美味しくなっちゃった!

夏の野菜や果物は盛りの頃になると、食べきれないくらい、 売りきれないくらい採れてしまう。
「捨てるのはもったいない……」という人は、 天日干しにしたり、乾燥機にかけてみよう。
保存食としていつでも食べられるだけでなく、 食感、風味など、生にはない持ち味がある。
直売所で売り物が途切れたとき、 並べれば受けること間違いなし!
さあ、いろいろ干してみよう。

 

これって山菜!?
食べたことないのに懐かしい「干しナス」

富山県福野町・荒川睦子さん/編集部

 

棚が寂しいときに置いたら売れた!

 町内の郊外型スーパーマーケット「エレナ」では、レジ近くの1番目立つところに「かあさんの店」がある。太い柱の周りに野菜や加工品が並べられ、のぼりが立つ。もともとはスーパーの外でテントを張った店だったが、あまりの集客力の強さに一昨年、スーパーの店長に依願され、そのまま中に移った。

スーパーマーケット“エレナ” かあさんの店
福野町内にある郊外型スーパーマーケット“エレナ”と、中にある「かあさんの店」

24名の農家の母さんたちが持ち寄る手作り品の中には意外な売れ筋がある。7年前の開店以来、秋から冬にかけて棚に並べられる定番商品「干しナス」もその一つだ。母さんの1人、荒川睦子さん(64歳)は「夏を過ぎると野菜が途切れることがあるでしょう。棚がちょっと寂しいときに置いてみたのが始まり」という。

 干しナスはもともと、このあたりで農家の保存食として食べられていた。しかし、最近は作る人が少なくなったし、スーパーに並ぶようなものでもない。だから、年配の女性が「あら、懐かしいねぇ」とかいいながら買っていく。そうやってお客さんが増え、1袋50g・150〜200円が残らず売れるようになった。

 

若者までが懐かしくなる不思議な味

 「干しナスは油揚げや煮干しと一緒に炒めたり、煮付けにするのが一番。誰が食べてもご飯やお酒が進むみたい。うちの5歳と3歳の孫だって喜んで食べるんだから」と睦子さんはいう。

 母さんたちにとっては、盛りのときに採れすぎたナスや、お店で売れ残ったナスが使えるし、保存も利くからいつでも出せる。中には保存が面倒なので、夏の盛りに、生のナスがどっさり並んでいる棚の横に干しナスの袋を置く母さんもいる。それでもすぐに売れてしまうというのだから、生の代用・保存食というよりも別の食べものと考えるべきだろう。

 「おもしろいのはね、絶対に食べたことがあるはずのない若い女の子たちがね、『なんか、懐かしい味がする』って繰り返し買いにくる。不思議でしょう」。年齢を問わず懐かしくなる味なのだ。

 また、睦子さんは加工所でおやきを作っているが、その具に干しナスを使う。「生のナスだと水分が多くてやわらかいから、どうしてもベチャベチャになりがち。干しナスならお湯で戻しても硬さが残って歯ごたえがある。味がおやきによくあうんだよ」。生のナスが使いにくい加工品も「ナス入り」でアピールできる。

 

干しナス
干しナス。やや質の悪いもの。
1日で干し上げれば、もっと白くなる

生にはない独特の芳ばしさと旨味

 「みんなに声かけたら1袋だけ残ってた」。睦子さんからいただいた袋の口を空け、においをかいでみる。野菜をカラカラに干してあるのだから無臭と思いきや、鼻に通るような生のナスの香りはしないものの、お日様にあたってひなびたような独特の芳ばしい香りがする。教わったとおり、ぬるま湯で戻し、油炒めと煮付けにしてみる。

 油炒めを口に入れ、噛んでみると、生のナスのようなグニョッとした感じではなく、皮の部分にキュッキュッという歯ごたえがある。そして、かすかにナスの初々しい香りがしたかと思うと、ジワッと芳ばしい旨味が染み出し、意外にしっかりした味だとわかる。煮付けのほうは、油炒めのような歯ごたえがない代わりに、煮汁がよく染みてジューシー。干しナスの芳ばしい旨味、煮干しのダシ汁、油揚げの甘みが渾然一体となって口の中でジュワーッと広がる。

 油炒めも煮付けも他にたとえようのない味だが、強いていえば、見た目も歯ざわりも違うものの、アク抜きしたゼンマイやワラビなど山菜のようだ。食べる前に何も聞かされていなければ、恐らくこれがナスだとわからない。どんな味かと聞かれれば、とっさに「懐かしい味」と答えてしまう、そんな味だ。

 

ナスは盛りに1日、秋に1日干し上げる

 睦子さんによると、干しナスを色よく仕上げ、長く保存するにはちょっとしたコツがあるという。

 まず、盛りのナスを採ること。お盆を過ぎて採ったナスを干すと硬くなるそうだ。採り遅れないように注意する(秋ナスは干しナスに向かないらしい)。「ナスの盛りのときはね、ちょうど他の野菜もたくさんだから、忙しいんだ。いざ干すとなると意外に面倒くさくなる」そうだ。

 それから、干すときは、これ以上ないというほどカラッと晴れ渡った日を選ぶこと。「1日で干し上がると色が白いまま。でも、曇ったりして2〜3日かかると茶色に変色してしまう」。変色しても味は変わらないが、売り物にするのだから見た目も大事。

 最後に忘れてはならないのが秋晴れの日にもう1度干すこと。「これをしないと、秋から冬にかけて黒い小さな虫がわく。白い部分が少しずつかじられてポロポロになる」。1日干せば、次の年の夏まで十分もつ。

 干しナスは乾燥によって単に水分が飛ぶだけでなく、天日によって熟成され、時間を置くことでさらに熟成されているはず。それで、生のナスにはない芳ばしさや旨味が生まれるのかもしれない。ぜひ、みなさんもお試しください。

 

●囲み記事1
●干しナスの作り方と使い方●

●囲み記事2
すぐに売り切れ! 切り干しナスを「温飯」に (秋田県横手市・あばだらけ)

●囲み記事3
年中食べられる干しナスの味噌漬け(大分県庄内町・生野美千子さん)

●囲み記事4
昔から各地で「干しナス」!

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